傘の知識

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傘の知識

カスタム傘に注意を払うために何が必要ですか?

傘の素材/装飾/加工

傘生地の素材 / Material

雨傘・晴雨兼用傘・日傘に使われる素材は主にポリエステル、ナイロン、T/C、ポリエチレンが一般的です。

日傘だけですと、綿や麻などの素材も使われます。

※下記の解説は一般的な製品に対するものです。特殊な製品は対象としておりません。

ポリエステル / Polyester
雨傘に関しては、ポリエステルが最も使われている素材ではないかと思います。ポリエステルは疎水性や発色が良いのがその理由です。デメリットとしては移行昇華(色移り)しやすい素材であることです。現在は加工技術の進歩により移行昇華する確率は減っていますが、染色の関係上絶対に色移りが発生しないとは言い切れないという問題があります。

ナイロン / Nylon
最近はほとんど使われていませんが、昔は製造コストが安かった為、ナイロンが沢山使われていました。近年ではポリエステルとほぼコストが変わらなくなった為、ナイロンを選択する理由がなくなりました。またナイロンは生地の収縮があり、冬などの空気が乾燥するシーズンは傘の開閉に支障をきたす場合があります。メリットとしてはポリエステルと比べ染色方法が異なるので、移行昇華は発生しない素材です。

T/C
ポリエステルと綿の混紡素材。晴雨兼用傘や日傘などに、綿のような風合いを出したいときに使う素材。通称T/Cと呼ばれていますが、かつてポリエステルの事をテトロン(東レの商標)と呼んでいた名残りで頭文字のTを使い、Cはコットン(綿)で、T/Cと呼ばれています。正確にはポリエステルとコットンなので、P/Cという呼び名がふさわしいかと思います。ポリエステルと綿の混紡比率は様々ですがポリエステル60%〜70%、綿が30%〜40%程度が相場になっています。

ポリエチレン / Polyethylene
ビニール傘などで使われる透明な素材。以前はPVC(=ポリ塩化ビニル)が使われていましたが、ダイオキシン問題でPVCは使われなくなり、代替素材としてポリエチレンがメインで使われるようになっています。ポリエチレンのデメリットとしては素材に傷が付きやすい事・白濁しやすい事です。

傘生地の経緯(縦横)

先染(チェック)の企画をしていると、縦糸・横糸の話になります。傘の完成品と反物で見え方が異なるので注意が必要です。上記図のように完成品では縦が横糸、横が縦糸になります。

傘生地の加工や機能

一般的な洋服と比べ、雨傘や晴雨兼用傘の生地には様々な加工が施されています。

※下記の解説は一般的な製品に対するものです。特殊な製品は対象としておりません。

防水加工
通常生地の裏面に防水加工が施されています。水を通さない機能をします。防水加工はアクリルコーティングが多く、その他はPU(=ポリウレタン)コーティングやシリコンコーティングなどがあります。

撥水加工
防水加工とは異なり、水を弾かせる為の加工が撥水加工になります。撥水加工は主に生地の表面に加工されます。加工原料は主にフッ素系のもので、価格により撥水のランクがあります。

UV加工
紫外線遮蔽率を上げる為の加工です。基本的には生地だけでもUVカットしますが、UV加工をする事で数%紫外線カット率があがる場合があります。生地の色や厚みなどによって遮蔽率が変わりますので、UV加工をして何%カット率が上がるのかはケースバイケースです。

黒っぽい生地はそもそも色によって紫外線をカットするので、UV加工を施しても効果が上がらない可能性があります。

遮光・遮熱加工
主に晴雨兼用傘などで使われる加工。防水加工でも使われるPUコーティングも遮光・遮熱加工の一種です。また生地に遮光フィルムをボンディングする事で遮光・遮熱機能を付加する素材もあります。

日傘と晴雨兼用傘の違い

日傘とは
雨の日には使えない傘です。太陽光を遮る専用のもので、傘生地には防水が施されていません。

防水が施されていても、刺繍やレース加工が多用されていると、日傘とする場合があります。

晴雨兼用傘とは
文字通りですが、雨でも晴れで使える傘です。

傘生地には防水加工が施され、またUVカット機能・遮光機能が付加されている商品も多々あります。

普通の雨傘と比較すると、長時間の雨や勢いの強い雨に使用するのは推奨されていません。

日傘用途メインで使ってもらい、ちょっとした通り雨などの時に使用するという程度で考えておいた方がいいと思います。

なぜ晴雨兼用傘は雨に弱いのか?
晴雨兼用傘は主に女性をターゲットに企画・製造されています。(最近は男性用もありますが・・・)

春から夏に使用することも含め、涼しげなデザインや加工が施されています。

刺繍やレースがその加工の代表例ですが、加工を施す事により、針穴が出来てしまい、その針穴から雨水が漏れてしまう可能性があります。

晴雨兼用傘の生地は綿もしくは綿とポリエステルの混紡を使用したものが多く、一般的な雨傘はポリエステルなどの疎水性の良い生地が使われております。綿もしくは綿とポリエステルの混紡生地は水を含みやすいので、ちょっとした雨の使用には全く問題ありませんが、長時間の使用には向いていません。

雨晴兼用という傘もある
最近は「晴雨兼用」ではなく「雨晴兼用」というジャンルの傘も出ています。

晴と雨をひっくり返しただけなのですが、これは基本的に雨傘にUV加工を施したものを指しています。

雨はバッチリ防ぎ、紫外線もカットする傘です。見た目はやはり雨傘なので、炎天下での使用は涼しげな感じはないかも知れません。

UVカット傘と遮光傘の違い

UVカットと遮光の違いをご存知でしょうか?近年は様々な機能の切り口の商品が出ておりますが、UVカットと遮光の違いを曖昧に表現をする商品が出ていますので、整理していきましょう。

UVカット傘とは

傘生地にUVカットコーティングを施したものになります。

UVカットコーティングには何種類かありますが、王道はPU(ポリウレタン)コーティングになります。

このコーティングを施す事によってUVカット率はほぼ90%以上となり「UVカット」という表示が可能になります。

中にはこのようなコーティングを施さず、専門知識のない業者が「UVカット」という表示をし販売している商品がありますので注意して下さい。

購入の目安としては、具体的に「UVカット99%以上」などの具体的数値を表示している商品の方が信憑性があると思います。

遮光傘とは

最近は「UVカット」を表示するかわりに、「遮光」と表示する商品が増えています。これはUVカットを更に進化させ、紫外線だけでなく太陽光を遮る仕様になっています。

遮光にも様々なレベルがありますが、遮光率が99%以上でないと「遮光」の表示は出来ません。「遮光」と表示されている商品はUVカットも99%以上あると思って頂いて原則いいかと思いますが、他社の商品の責任は持てませんので、個々の商品の表示をご確認願います。

遮光には2つの方法があり、ひとつはPUコーティングを施す方法、もう1つは遮光フィルムをボンディングする方法とあります。

劣化が少ないのは遮光フィルムのタイプになりますが、ボンディングする事で生地が重くなったり硬くなったりするデメリットもあります。

良い商品を見分けるポイント
商品に機能表示するラベルが付いていますので、具体的にUVカット99%以上・遮光率99%以上などの数値が明示されている商品をお選び下さい。

また最上性能の表示として「UVカット100%」「遮光率100%」「完全遮光」と謳っている商品がありますが、それは生地の性能表示になります。生地の状態では100%かも知れませんが、傘という完成品にしていく過程において針と糸で縫って加工しますので、生地の状態から変化しています。

グラスファイバー骨とは

主に傘のフレームに使われている傘骨素材のひとつ。

業界での名称は通称グラスファイバーと呼ばれていますが、正しくは繊維強化プラスチック (FRP) と呼びます。

ガラス繊維とプラスチックを混ぜて固める事で、プラスチック以上の弾力性を発揮します。

主に傘の親骨に使われる事が多いです。

グラスファイバー骨の特徴
先程も書いた通り、弾力性があるのがグラスファイバーの素材特性になります。

傘骨で一番折れやすいと言われているのが親骨で、折れる原因は風に煽られることで発生します。

しかしグラスファイバー骨は傘骨が風に煽られて曲がっても、その弾力性で折れる事なく元に戻ります。

グラスファイバー骨のデメリット
グラスファイバー骨は折れにくいと書きましたが、絶対に折れない訳ではありません。

ある一定の極限まで曲げると折れてしまいます。

どの程度で折れるかはグラスファイバー骨の太さや長さによって変わってきますが、かなり極端に曲げない限り折れる確率は低いと思われます。

グラスファイバー骨が簡単に折れてしまうとき
丈夫なはずのグラスファイバー骨が簡単に折れてしまうという話を聞きます。考えられる原因としては・・・

ガラス繊維とプラスチックを混ぜて固める工程において、成形時の温度が不安定
金属ダボを親骨に使用する場合がありますが、金属ダボにバリなどがある場合
が考えられます。

移行昇華とは

移行昇華とは?
移行昇華とは、分散染料で染められた傘生地の色が、他の部分へ色移りしてしまう現象です。

ポリエステルの場合、物性的に色移りが発生してしまいます。染色技術の進歩により、移行昇華する可能性はかなり下がりましたが、絶対に色移りしないという生地メーカー保証はありません。

また傘生地は防水コーティングが必須になりますが、防水コーティング剤と染料が化学反応する場合があり、一般的な生地と比べ色移りしやすいという推測もあります。

移行昇華を発生させないポイント

現在の染色技術では完全に防ぐ事はできません。そのことを理解した上で企画をする。
白地に赤や紺などの組み合わせは移行昇華が発生しやすいので、デザイン企画段階から配色に注意する
発注前に生地メーカーへビーカーを取りますが、ビーカー時点で堅牢度に注意する
マイクロファイバー系の高密度生地は移行昇華しやすいので、プリントは製造しない。
生地をポリエステルではなくナイロンに変更する。(ただしナイロンは色が全体的にくすみ、生地の伸縮があります)

撥水傘(はっ水傘)とは

撥水加工と防水加工は別物です
傘生地の表面には撥水加工が施されています。撥水とは水を弾く表面加工のことです。一方、傘の裏面には防水加工が施されており、水が染み出さないようにする加工を言います。撥水加工と防水加工、何となく似た意味を表すような感じがしますが、それぞれ役割があります。

撥水が長持ちする商品もあります
撥水や超撥水は先程説明した通り、新品の状態での検査結果です。しかし本来撥水とは、新品時の水弾きがどれだけ長持ちするかが大切です。商品購入時は、撥水がどれくらい長持ちするのかどうかの品質を明示しているの商品を推奨します。

撥水はメンテナンスが必要
撥水、超撥水の傘はメンテナンスが必要です。

メンテナンス方法は、傘を開いて、生地の裏側から低温〜中音でアイロンを当てます。生地に熱を与えることで、撥水コーティング素材として使われているフッ素が復活します。強く押し当てると生地にアイロン跡が残る可能性がありますので、軽い力でスライドさせながら熱を与えてください。